怪我をした直後の痛み!!急性痛の正体と対処法は?




以前書いたBlog『痛みの意味』

人はなぜ痛みを感じるのか?身体にとっての痛みの意味。

2018年2月11日

の中で簡単に急性痛の説明を書いていましたが、

今回は急性痛について

痛みの分類や発生のメカニズム、発生直後の対処法など

説明していきたいと思います!!

急性痛とは

急性痛とは、

怪我をした直後に感じる痛み。

組織の損傷に基づいて起こる痛みで、

痛みの原因が明確であるものをいいます。

急性痛は、

生体に生じた危険を警告信号として伝え、

危険からの逃避や組織損傷の修復など生体防御反応を賦活します。

つまり、急性痛は生体にとって重要な役割を果たす必須の感覚、

つまり正常な痛みなのです!!

1.一次痛と二次痛

急性痛において侵害刺激を受けて発生する痛みには、

主に伝達・感知時間の差により一次痛二次痛に分類されます。

例えば、刃物で傷ついたときや金槌で誤って指を叩いた時などから理解できるように、

痛みには、侵害的刺激を受けた

直後に感じる一次痛と、

少し遅れて感じる二次痛

そしてその後しばらく感作による痛みが存在します。

一次痛(fast pain)は、

侵害刺激の入力直後に発生するチクッとする鋭い痛みで、

速くて識別性がよいのが特徴です。

一次痛の伝達経路は、

主に高閾値機械受容器からAσ線維によって

脊髄後角第Ⅰ〜Ⅴ層の大型ニューロンに伝えられ、

外側脊髄視床路を経て視床の外側核群、大脳皮質の体性感覚野に至ります。

一方、二次痛(slow pain)は、

一次痛の数秒後に遅れて感じるズーンとする鈍い痛みで、

遷延性で識別性の悪いのが特徴です。

二次痛の経路は、

主にポリモーダル受容器からC線維によって脊髄後角の主に第Ⅱ層へ、

さらに介在ニューロンにより第Ⅵ〜Ⅷ層のニューロンに伝えられ、

内側脊髄視床路などを経て視床の内側核群、広範囲の大脳皮質、辺縁系などに投射されます。

その後、20〜30分すると、次第に患部がジンジンする痛みが生じます。

この痛みは、侵害刺激による末梢神経や脊髄の感作(過敏化)によるものなのです。

2.急性痛の発生メカニズム

では実際にどのように急性痛が発生するのかメカニズムについて説明します!

発生メカニズムには、

①組織損傷

②神経性炎症

の2つがあります。

それでは一つずつ説明していきます。

1)組織損傷

痛みを感じるには、

なにかしらの刺激により

痛覚受容器が興奮する必要があります。

その痛覚受容器の興奮に関与する主な物質は、

①ブラジキニン

②プロスタグランジン

③サブスタンスP

④CGRP(carcitoningene-related peptide:カルシトニン遺伝子関連物質)

⑤ヒスタミン

⑥セロトニン

その他にはソマトスタチン、カリウムイオン、サイトカイン、ロイコトリエン、などがあります。

運動神経が筋肉を収縮させるためには

神経末端部でアセチルコリンが放出されることが必要なように、

感覚神経もその情報を中枢(脳)に伝達するためには、

感覚神経系のシナプス部で神経ペプチドが必要となります。

上記の物質のうち、

サブスタンスP、CGRP、ソマトスタチンなどは

後根神経節に存在する一次求心性ニューロンの細胞体で産生された後、

軸索を逆輸送され末梢で神経末端より組織中に放出されるとともに、

細胞体より順行性に脊髄後角まで輸送され、

一次ニューロンから二次ニューロンへの痛覚情報の伝達物質としても作用します。

またポリモーダル受容器は侵害刺激により

サブスタンスP、CGRPなどを末梢組織中に放出しますが、

末梢組織中で産生あるいは遊離された

ブラジキニン、プロスタグランジン、ヒスタミンなどの

炎症メディエータによっても興奮し、

痛みをさらに増悪させる特性があります。

それでは痛みに関係する炎症メディエータの代表的なものについて、

それぞれの特性を説明しましょう。

①ブラジキニンは、

アミノ酸9個からなるポリペプチドです。

炎症時の痛みにはブラジキニンが最も関連の深い化学物質の一つであると言われています。

ブラジキニンは、10−8molという低濃度から直接ポリモーダル受容器に働きかけ、

濃度が上昇するに従い(濃度依存性に)痛みを増強させ、

低濃度でも熱刺激に対する興奮作用を増強する性質をもちます。

さらに、ブラジキニンは血管内皮細胞に対して収縮作用があるので、

血管透過性が亢進し、隣り合う内皮細胞の間隙から分子量の小さい物質が血管内から

組織間隙へ容易に流出するので、浮腫が誘発されます。

さらに、ブラジキニンは血管内皮細胞に直接働きかけ、一酸化窒素(NO)の産生を促し、

平滑筋の弛緩による血管拡張に間接的に作用する特徴をもちます。

また、筋を最大張力の50%で持続的に収縮させると、

血中のブラジキニン濃度が上昇し、

痛みを引き起こすことが確かめられている。

②プロスタグランジンは、

それ自体では痛みを誘発しませんが、ブラジキニンに働きかけ、

ブラジキニンの反応を増強する作用をもっています。

このことから、プロスタグランジンは痛覚増強物質と呼ばれています。

③サブスタンスPは、

一次求心性ニューロンの中でも比較的小型のニューロンに多く含まれています。

サブスタンスP含有ニューロンは脊髄後角の第Ⅰ、Ⅱ層に多数みられ、

第Ⅱ層の中で後角ニューロンの樹状突起との間にシナプス形成しています。

さらに、サブスタンスPは機械的(圧)侵害情報の末梢から脊髄後角への伝達に寄与しているとされています。

④CGRPは、

後根神経節の各種サイズの細胞に含まれ、

ラット腰髄の後根神経節では、全細胞の約50%に含有され、

一次求心性ニューロン終末からサブスタンスPの遊離を促進することにより

痛覚の伝達に関与していると報告されている。

⑤ヒスタミンは、

炎症時にサブスタンスPの刺激を受けた肥満脂肪から遊離され、

血管拡張作用や血管透過性亢進作用を有しているが低濃度では掻痒感を生じさせます。

皮膚が痒いときに抗ヒスタミン剤が処方されるのは、これらの現象を抑制するためなのです。

⑥セロトニン

発痛作用のほかにブラジキニンの痛覚増強作用もあります。

2)神経性炎症

ポリモーダル受容器は細径求心性C線維により侵害情報を伝達するだけでなく、

末梢組織に効果器として働きかける性質をもっています。

ポリモーダル受容器が効果器としての作用を発揮し、

受容器の近傍周辺に炎症症状を呈するとき、

これを神経性炎症といいます。

指で皮膚を引っ掻くと、その部位に発赤、浮腫およびその周囲のフレアー形成という

軸索反射による炎症反応が現れますが、これも神経性炎症の一つなのです。

侵害刺激が与えられると、ポリモーダル受容器はサブスタンスP、CGRPなどのペプチドを放出します。

サブスタンスPは近傍の肥満細胞に働きかけ、ヒスタミンの放出を促します。

CGRPは血管拡張に作用し、サブスタンスPはヒスタミンとともに血管の透過性を増大させ、

好中球の走化性や破壊された細胞に対するマクロファージによる食作用などの炎症作用を促進し、

Tリンパ球の増殖などの免疫反応にも影響を与える事が知られています。

つまり、ポリモーダル受容器は侵害刺激により

その局所に発赤、腫脹、発熱などの炎症反応を出現させるだけでなく、

傷害された細胞の修復にも関与していることがわかります。

また、ポリモーダル受容器は

組織温度の上昇や浮腫自体の機械的刺激により興奮が増強され、痛覚過敏を呈するので、

捻挫や突き指をした時は患部を早急に冷やしたり、固定により浮腫を軽減することは、

ポリモーダル受容器の活動を抑制し、神経性炎症を最小限に抑えることになるのです。(RICE処置)

 

まとめ

急性痛とは、

痛みの原因が明確であり、

生体にとって重要な役割を果たす必須の感覚であり、

正常な痛み

そして急性痛では、

侵害刺激の直後に感じる

一次痛という鋭い痛みがあり、

その後少し遅れて二次痛という鈍い痛み、

そのしばらく後におくれて感作による痛みが出現する。

急性痛の発生メカニズムにおいては、

組織損傷または、神経性炎症の2つがあり、

ブラジキニンなどの物質が痛みを引き起こしたり、痛みを増強させます。

また伝達受容器であるポリモーダル受容器は効果器にもなり、

神経性炎症として炎症や浮腫を引き起こします。

そのため、怪我をした際にはRICE処置を行い、

ポリモーダル受容器の活動を抑制させ炎症や浮腫を軽減させることが重要なのです。

急性痛は対処を正しく行えば消失するまたは減弱させることのできる痛みなので、

怪我をした際は慌てずにRICE処置を行いましょう!!

しかし、多くの人の痛みで生活に悪影響を与えてる痛みは、

急性痛ではなく慢性痛がほとんどなのです。

次回は慢性痛について!!

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!!




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ABOUTこの記事をかいた人

現在、一般病院勤務の理学療法士。 元テニスインストラクターをしており、好きなことを仕事にするも怪我でテニスが出来なくなる生徒を目の前にして、自分自身も怪我でテニスができなかったことを思い出す。やりたいことができなくなった人のために、またやりたいことをするためのお手伝いができる仕事はないかと探し、再びリハビリテーションの専門学校へ入学。卒業後、理学療法士となる。 自分が今まで得てきた知識を誰かの役に立てるためブログを執筆中。